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公園昆虫記

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コシアカスカシバ

私が初めてコシアカスカシバを見たのは、なんと10年も前、2004年8月のこと。樹液に来る昆虫を探しに善福寺公園に来た時のことだった。
遠くから見たクヌギの木にスズメバチのようなものが止まっていたので、おそるおそる近づくと、どうもスズメバチではないようだ。

↓コシアカスカシバ 2004年8月21日 善福寺公園
コシアカスカシバ_d0146854_1133991.jpg

家に帰って調べて、コシアカスカシバという蛾なのだとわかって、その擬態のすごさにただただ驚いた。

しばらく忘れていたが、また同じ公園の別のクヌギの木でコシアカスカシバに出遭った。

↓コシアカスカシバ 2008年9月6日
コシアカスカシバ_d0146854_11355730.jpg

その時は、「この公園にはコシアカスカシバがよく見られるのだな。」と単純に思っただけだった。

そして、2013年、今度は井の頭公園のコナラでもコシアカスカシバが見つかった。

↓コシアカスカシバ 2013年8月16日。井の頭公園のコナラにて
コシアカスカシバ_d0146854_11384239.jpg

この時も、「井の頭公園にもいるんだ。」と思っただけ。クヌギ・コナラとくれば、当然気づくべきことが頭に浮かばなかった不見識が恥ずかしい。

そして、今年2014年8月29日。この時もなんとなくいつも定番のチェック場所としてピンオークの樹液ポイントに立ち寄ったとき、またこれが目に入った。

↓ピンオークに来たコシアカスカシバ。写真は2014年8月31日のもの 井の頭公園
コシアカスカシバ_d0146854_1143987.jpg

お仲間に連絡して観察しながら、そこでやっとつながった。クヌギ・コナラ・ピンオークとつながれば、ブナ科ではないか。コシアカスカシバは、ブナ科が食樹であるに違いない。

お仲間と観察すると、確かにコアシスカシバは、お腹の先を曲げ、幹に産卵しようとしているように見える。
なんとか卵を撮りたいと必死に観察したが、苔の間や樹皮の窪みに産み付けているようで、なかなか見つけられない。やっとの思いで、何か茶色い卵状のものが撮れた。

↓コシアカスカシバの卵 同日同場所
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コシアカスカシバの生態を調べてみると、幼虫は木の幹の中を食べ、幼虫時代に羽化するための扉をつくっておいて蛹になり、その扉を押しあけて成虫が出てくるらしい。
木の幹を見ると、幹から半分出ている蛹の抜け殻がたくさん見つかる。

↓蛹の抜け殻
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これをひっぱると簡単に抜けた。

↓引っ張り出した蛹の抜け殻
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私が初めて善福寺で見たコシアカスカシバは、翅を閉じた状態だったので、もしかしたら羽化して間もない個体だったのかもしれない。この個体を撮影したのは、午前10時代だった。
産卵活動をさかんに行うのは、どうも午後1時ごろかららしい。

もっと早い時間に見に行けば、羽化の様子が見られるかもしれないし、交尾の様子も見てみたい。

しかし、この蛾の生態はカミキリムシによく似ていて、産卵された樹木にとっては、あまりありがたい存在ではないだろう。羽化あとからは樹液などが出るのだろうか。そしてそれをスズメバチがなめにくるとしたら、蛾の天敵は当然、スズメバチを避けようとして、スズメバチによりよく似た蛾ほど生き残る確率が高くなるはずで、そうした繰り返しから、この擬態が進化したのかもしれない。
傍で蛾を追い回していた時、蛾が近寄ってきて耳元で出した振動音も蜂そっくりに聞こえた。

おまけ

↓手乗りコシアカスカシバ
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スズメバチの手乗りに見えますか?
by 2008oharu | 2014-09-01 12:09 | | Comments(8)
Commented by yamap at 2014-09-01 22:11 x
扉を作ってから蛹になる?確かに幹の中で羽化したら出れなくなってしまうでしょうが、なんという用意周到さ。
手馴れた職人の鮮やかな手さばきを見ているような話です。人間は何万回も反復してやっと手に入れますが、この方法では弟子には伝わりません。脳みそもない虫の方法は・・・・本当に不思議です。
Commented by みき♂ at 2014-09-02 06:25 x
こんにちは。
コシアカスカシバ、今年はずいぶんとたくさん出たものですね。
もう無理かもしれませんが、羽化するところも見てみたいです。
来年の8月下旬は朝から詰めてみますか(笑)。
Commented by おはる at 2014-09-02 08:45 x
yamapさん、私も初め蛹がどうやって幹の中から出てくるのだろうと不思議に思ったのですが、予め出口をつくっておくと知って、これもまた驚きでした。本能に組み込まれた行動なのでしょうが、そういう本能を獲得したということが凄いですね。
Commented by おはる at 2014-09-02 08:46 x
みき♂さん、今年はほんとうにたくさん出たようです。毎年こうなるとは限らないのでしょうが、来年は忘れないように探さないと。
Commented by 群落 at 2014-09-02 20:13 x
キャホー!これで蛾ですか。究極の擬態、究極のベイツ型擬態ですね。スカシバガ科?え「バカ」!いやいや「バガ」でした。失礼。このような変わった名ですが、スカシバ+ガからきているのですかね。兎に角、驚きました。驚きの世界を教えていただき、ありがとうございました。
Commented by おはる at 2014-09-02 20:47 x
群落さん、コメントありがとうございます。ほんとうによくぞここまで!と思いますね。翅が透き通っている蛾の仲間からきている名前だと思います。コスカシバとかモモブトスカシバなんていう仲間がいます。結構身近にいますので、探してみてください。
Commented by iru at 2023-07-26 00:37 x
キイロスズメバチが庭に毎日遊びに来る!といろいろ対処しましたが、毎日毎日、私の周りを飛んでるし、近寄ってくるし、近くにいるよ~って、見える場所まで飛んできてわざわざ目に入るようにしたり、ホバリングして遠くから見ていたり、まるでからかわれてるみたいです。

それでめちゃくちゃ調べてこちらにたどり着きました。
蜂との見分け方が分かれば教えて欲しいです。
また、コシアカスカシバも羽音が太く大きいでしょうか?
凄く悩んでいるので教えて頂けると助かります。
宜しくお願いいたします。
Commented by 2008oharu at 2023-08-03 08:14
> iruさん
iruさん、コシアカスカシバは、スズメバチに擬態しているので、遠目にはとてもよく似ていて、慣れない人にはなかなか区別できないかもしれません。羽音も大きいです。しかし、人のそばによって来たり近寄ってくることはあまりないと思います。スズメバチは樹液にやってきますが、コシアカスカシバは、幹の隙間に産卵するために来るので、行動をよく見ると違いがわかるのではないでしょうか。また、近づくのは躊躇われるでしょうが、遠くから写真に撮って姿をよく見ると、ハチではないことがわかると思います。