私が初めてコシアカスカシバを見たのは、なんと10年も前、2004年8月のこと。樹液に来る昆虫を探しに善福寺公園に来た時のことだった。
遠くから見たクヌギの木にスズメバチのようなものが止まっていたので、おそるおそる近づくと、どうもスズメバチではないようだ。
↓コシアカスカシバ 2004年8月21日 善福寺公園
家に帰って調べて、コシアカスカシバという蛾なのだとわかって、その擬態のすごさにただただ驚いた。
しばらく忘れていたが、また同じ公園の別のクヌギの木でコシアカスカシバに出遭った。
↓コシアカスカシバ 2008年9月6日
その時は、「この公園にはコシアカスカシバがよく見られるのだな。」と単純に思っただけだった。
そして、2013年、今度は井の頭公園のコナラでもコシアカスカシバが見つかった。
↓コシアカスカシバ 2013年8月16日。井の頭公園のコナラにて
この時も、「井の頭公園にもいるんだ。」と思っただけ。クヌギ・コナラとくれば、当然気づくべきことが頭に浮かばなかった不見識が恥ずかしい。
そして、今年2014年8月29日。この時もなんとなくいつも定番のチェック場所としてピンオークの樹液ポイントに立ち寄ったとき、またこれが目に入った。
↓ピンオークに来たコシアカスカシバ。写真は2014年8月31日のもの 井の頭公園
お仲間に連絡して観察しながら、そこでやっとつながった。クヌギ・コナラ・ピンオークとつながれば、ブナ科ではないか。コシアカスカシバは、ブナ科が食樹であるに違いない。
お仲間と観察すると、確かにコアシスカシバは、お腹の先を曲げ、幹に産卵しようとしているように見える。
なんとか卵を撮りたいと必死に観察したが、苔の間や樹皮の窪みに産み付けているようで、なかなか見つけられない。やっとの思いで、何か茶色い卵状のものが撮れた。
↓コシアカスカシバの卵 同日同場所
コシアカスカシバの生態を調べてみると、幼虫は木の幹の中を食べ、幼虫時代に羽化するための扉をつくっておいて蛹になり、その扉を押しあけて成虫が出てくるらしい。
木の幹を見ると、幹から半分出ている蛹の抜け殻がたくさん見つかる。
↓蛹の抜け殻
これをひっぱると簡単に抜けた。
↓引っ張り出した蛹の抜け殻
私が初めて善福寺で見たコシアカスカシバは、翅を閉じた状態だったので、もしかしたら羽化して間もない個体だったのかもしれない。この個体を撮影したのは、午前10時代だった。
産卵活動をさかんに行うのは、どうも午後1時ごろかららしい。
もっと早い時間に見に行けば、羽化の様子が見られるかもしれないし、交尾の様子も見てみたい。
しかし、この蛾の生態はカミキリムシによく似ていて、産卵された樹木にとっては、あまりありがたい存在ではないだろう。羽化あとからは樹液などが出るのだろうか。そしてそれをスズメバチがなめにくるとしたら、蛾の天敵は当然、スズメバチを避けようとして、スズメバチによりよく似た蛾ほど生き残る確率が高くなるはずで、そうした繰り返しから、この擬態が進化したのかもしれない。
傍で蛾を追い回していた時、蛾が近寄ってきて耳元で出した振動音も蜂そっくりに聞こえた。
おまけ
↓手乗りコシアカスカシバ
スズメバチの手乗りに見えますか?