アオスジアゲハは、都会でもよく見られるきれいなアゲハだ。
9月上旬のある日、以前アオスジアゲハの幼虫が見られた場所をちょっとチェックしてみると、葉にたくさんの卵がついているのを発見。
アオスジアゲハの幼虫はクスノキの葉を食べるし、同じクスノキ科のヤブニッケイやタブノキの葉も食べる。その違いがよくわからないので森林インストラクターの知人に調べてもらったら、この樹はやはりクスノキだった。
今までもアオスジアゲハの卵や幼虫、蛹は見たことがあるが、この木には、とてもたくさん卵が産み付けられているのでびっくり。
数日後、そろそろ孵化するのではないかとチェックに行く。
孵化直前の卵は中の色が透けて見える。
葉に食痕があるので葉裏をチェックすると、たくさんの幼虫がいた。
孵化食後の幼虫は、とげとげが多い。
数えてみると、幼虫は20匹はいるようなので、継続して観察してみることにした。
初め幼虫は葉裏にいて、脱皮するととげとげが減り、緑色っぽくなってくる。
上の写真の緑色っぽい幼虫の右横に、脱皮殻がある。
こちらは、脱皮の最中。
緑色っぽくなった幼虫は、葉の表に出てきて、食事をしていないときは、口から吐き出した糸で台座を作り、その上に体を固定して休んでいる。何匹か一緒に乗っていることが多い。
食事するときは、台座を離れ、他の葉に移る。
頭は黄色いこともわかった。
いよいよまるまる太った終齢になった。
たくさんの幼虫がどこでどんな風に蛹になるのか、とても楽しみにしていたのだが…。
2~3日後に行ってみると、なんと終齢幼虫は全部いなくなってしまった。
数日後、さらにあちこちをチェックしたが、幼虫はついに1匹も見つからず、蛹もない。
そして誰もいなくなった…。
いったい幼虫たちはどうなったのだろうか。
幼虫の天敵と考えられるのは、鳥、狩り蜂、寄生蜂、クモなどだ。
実際、若齢幼虫がクモに襲われているのも見たし、寄生されているような幼虫もいた。
しかし、こういっせいにいなくなるのはなんとも解せない。
一斉に移動して、他所で蛹化するにしても、1~2匹は移動しているところを目にしそうなものだし、狩り蜂に襲われたのなら、その現場も1~2回は目にできたはずなのだが…。
というわけで、幼虫の観察は竜頭蛇尾のごとく謎を残したまま、あっけなく終わってしまった。
自然の中で、生活史の全工程を観察するのはやはりとても難しい。
以上は、9月5日から10月3日まで、井の頭公園の同じ場所で観察したもの。
ウインターコスモスで吸蜜するアオスジアゲハ 2015年10月7日 井の頭公園
また来年、観察する機会があるといい。