地元の都市公園では、アサギマダラは主に初夏(5月)と秋(9月~10月)に見られるチョウだ。
アサギマダラは渡りをするチョウなので、渡りの途中で通過する道筋になっていると思われる。
渡りの夏鳥のようなイメージだ。
今年は9月29日に公園内で出遭った。翅が千切れたオスだった。
飛んでいると色合いがアカボシゴマダラに似ているが、アカボシゴマダラより、飛び方が優雅だ。
アカボシゴマダラの方が、アサギマダラに擬態しているのかもしれないが。
たまに、7~8月の真夏に地元で出遭うこともあるが、それはどういう状況なのだろうか。
夏に高原などに出向くと、ヨツバヒヨドリバナにアサギマダラが多数集まって吸蜜している。よく見るとそれはみなオスばかり。
「アサギマダラ 海を渡る蝶の謎」(佐藤英治・山と渓谷社)によれば、
「オスは性フェロモンの材料であるピロリジジンアルカロイド(PA)という化学物質をふくむ植物を訪れ、蜜や汁を吸い続けます。そして、腹端からヘアペンシルという発香器官を出して、同じ発香器官である後翅の性標にこすりつけ、PAを性フェロモンへと変えるのです。」
というわけで、このヒヨドリバナがPAをふくんでいるかららしい。
オスは、移動しながら、その先々でPAをふくむ植物で吸蜜しつつ成熟し、メスと交尾するというわけだ。
その交尾の場面を見るのもなかなか難しそうだ。
さて、地元東京では、高度500mほどの低山でアサギマダラが繁殖している。
そこには幼虫の食草であるキジョランが茂っていて、毎年幼虫を確認してきた。
今年の3月に確認した幼虫
キジョランの葉は常緑なので、冬場も葉を食べることはできるが、冬場はほとんど動いていないように思われる。
今年は、教えていただいて、卵と蛹も確認することができた。
アサギマダラの卵
キジョランの葉の裏側をめくってみると、あちこちについていた。1頭のアサギマダラが産卵したものだろうか。
この卵が孵化して、一冬幼虫で過ごすのだろう。
アサギマダラの蛹
これもキジョランの葉裏についていた。(2枚は同一個体)
この蛹は、この秋のうちに羽化するはずだ。
ここで羽化した成虫は、南へ移動するのだろうか。それともこの場でPAをふくむ植物を探して成熟し、交尾産卵するのだろうか。
この日は、あたりにアサギマダラのメスが何頭か飛んでいた。
すべてメスだった。比較的傷のないきれいな個体ばかりだったので、近くで羽化したものかもしれない。
センダングサの仲間やアザミの仲間で盛んに吸蜜している。
これらのメスは、どこかですでにオスと交尾を済ませていて、この地で産卵するのだろうか。
前述の本によれば、
「9月中旬までに生まれた卵は、11月上旬までに羽化して南下の旅に加わるはずです。それよりあとに産卵されたものは、幼虫のままキジョランの葉裏にとどまり、冬を越してからさなぎになるものが多いと思われます。」
とある。
この日見つけた蛹は、微妙な時期にあたっているようだ。
この低山では、12月~1月でもアサギマダラの成虫が見られることがある。
それらは、もう南へは渡らず、この地で命を終えるのだろう。
ひとくちに渡りをするチョウといっても、具体的な生態には謎が多いなぁと思った。