アサマイチモンジを観察した場所は、スイカズラの他に、エノキ、シャリンバイ、ウマノスズクサなど多数の植物がおりなすブッシュになっていて、アサマイチモンジの他にも、ジャコウアゲハ・アカボシゴマダラ・アゲハ類などいろいろな種類のチョウがやってくる。
アサマイチモンジを観察していると、食草のスイカズラだけでなく、なぜかシャリンバイにもよく止まる。初めはただ休憩のために止まるのかと思っていたが、よく見ると、シャリンバイに止まったアサマイチモンジは口吻を伸ばしていることが多いのだ。
口吻を伸ばしながら葉の表を移動するアサマイチモンジ
やがて、主脈上にある汁のようなものを探り当て、盛んに吸い始めた。
別の場面では、やはりシャリンバイの枝を移動して、枝についた汁のようなものを吸っているように見えた。
たぶん、アブラムシのようなものがついていて、それが排出する汁を吸っているのではないか。
家に帰ってシャリンバイについて調べてみると、アブラムシやカイガラムシがよくつくらしいこともわかった。
あたりにはスイカズラの花が咲いていたし、シャリンバイの花も咲いていたが、アサマイチモンジはそれらの花には一度も訪れなかった。もっぱら樹液のようなものを好むチョウらしい。
この場所は、食草のスイカズラがあり、餌となる樹液(排出液?)もあり、アサマイチモンジには理想的な生息地になっているのかもしれない。
「森と樹と蝶と」「小さな蝶たち」などの著者、西口親雄氏によると、アサマイチモンジはかって「スイカズラ王国・中国の西部を中心に、日本の温帯域にまで分布を広げ、ゆうゆうと生活していた。ところが、(食草を同じくする)イチモンジチョウの出現でふるさとを追われ、日本という隔離列島で、なんとか生き残ることができた。」そして、その後さらに進化したミスジ型イチモンジチョウによって、イチモンジチョウも大陸を追われてきたという。
今、スイカズラがたくさんある状態なら、アサマイチモンジとイチモンジチョウは日本で共存できるはずだが、スイカズラが減ってしまうと、アサマイチモンジはまたイチモンジチョウに圧力を加えられるかもしれないと氏は懸念している。
この場所のスイカズラも、以前はフェンスにたくさん絡まっていたそうだが、今はフェンスからはきれいに刈り取られている。どうかこれ以上減らさないで、アサマイチモンジの生息地を守ってほしい。