今年の上半期の最大のトピックスは、ヤブヤンマの大量発生だった。
5月10日のこと。鳥観仲間の方がトンボがぶら下がっているというので見てみると、ヤブヤンマのようだった。
2頭いて、どちらもヤゴの抜け殻の傍にぶら下がっている。すでに腹も伸び翅もきれいに広がっているが、ここで羽化した個体に違いない。あたりを探してみると別の場所にヤゴの抜け殻があと2つみつかったので、少し前から発生が始まっていたのだろう。
ここは2~3年前に作られた人工的な池で、ヤブヤンマがこの池から発生したのは初めてだったのではないかと思われる。
その後気になって時々チェックしてみたが、驚いたことにヤブヤンマの羽化は次々と続き、7月8日までの間に私が確認しただけで20頭以上が羽化してぶら下がっていた。
草地でも羽化
フェンスでも羽化
腹の先が水に浸かっている場所で
中には羽化に失敗して固まってしまったものもいた。
この枝は羽化時に好まれる枝のようだ。抜け殻がいっぱい重なっている。
抜け殻に着目してみると、さらに多くの数が羽化していたことがわかった。
フェンスにも20個ほどのヤゴの抜け殻がついている。全部を総合すると、この池から羽化したヤブヤンマは少なく見積もっても50頭はいたようだ。
羽化したてのヤブヤンマは未成熟で、成熟するまで別の場所へ移動して餌などを捕っているのだろう。近くの広場で大きめのヤンマが飛び回っているのを目にしたことがあるので、それがここで羽化したヤブヤンマだったのかもしれない。
6月も下旬ごろになると、池を周遊するヤブヤンマの姿が見えるようになった。成熟したオスがメスを探しに来たり、メスが産卵しに来たりしているようだった。
産卵するメス(6月26日~7月22日)
ヤブヤンマは直接水中には産卵しない。岸辺の土の中などに産卵する。
周遊後休むオス
ブルーの目が美しい。
ヤブヤンマはそれほど珍しいトンボではないが、1か所からこれほど大量に発生したということには驚かされた。たぶんこの池が新しくできたものだったので、競争相手も天敵もいない状態で、昨年産み付けられた卵の生存率が非常に高かったのだろう。
この池から発生したと思われる水生昆虫(幼虫時代を水中で過ごす昆虫)もこの春大量に発生していた。(セスジユスリカ・カゲロウの仲間・トビケラの仲間など)これらは、ヤゴの餌になっていたと思われる。
今後、ヤブヤンマの生息数はどのように推移していくのだろうか。競争相手や天敵が増えていって、大量発生は収まっていくのではないかと推測はできる。
生態系の推移を考えていく上でとても面白い現象だった。