若い頃、アマチュア研究者・田中 肇氏の著書「花と昆虫」(保育者)を読んで、花と昆虫の共進化にとても興味を持つようになった。
その本の最初の方に出てくるのが、初冬に咲く虫媒花ヤツデと昆虫の関係である。
今ちょうどヤツデの花の盛り。その花の蜜を求めて来る昆虫は、初冬でも活動しているとても地味な昆虫たち、ハエ・アブたちだ。
↓ホソヒラタアブ。2008年11月15日。善福寺
↓アリ(たぶんクロヤマアリ)。2008年11月15日。善福寺
↓例のトリバガがも蜜を吸いに来る(蝶と同じように口吻を伸ばしている)。同場所同日。
上の三種の昆虫が蜜を吸っているのは、ヤツデの雄花だ。雄しべが5本出ていて、真ん中に雌しべのもとが見えていはいるが、雌しべは花粉を受け付けない。
↓キンバエの仲間 2008年11月10日。井の頭公園・小鳥の森周辺。
このキンバエが蜜をなめているヤツデの花は雌花。花びらも雄しべも落ちて、雌しべだけが伸びてきて、昆虫の体についている花粉を受け付ける。
実はヤツデの雄花と雌花は時期が違うだけで、同じ花なのだ。ヤツデの花は雄花期→中性(雄しべと花びらを落とし、蜜を出さない時期)→雌花期(雌しべが伸びてきてまた蜜を出す)と変化する両性花なのだそうだ。
この仕組みは、同花受粉を避ける役目をしている。
ヤツデは他の花が少なくなった初冬に咲くことによって、この時期活動できる昆虫たちを独り占めすることができるし、昆虫たちも、厳しい冬に備えてたくさん蜜を吸って体力をつけることができるというわけらしい。
井の頭のヤツデの側に、シロダモという花が咲いていた。この花にもキンバエなどが来ていたから、同じ戦略を持った花なのかもしれない。
↓シロダモ。2008年11月10日。井の頭