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公園昆虫記

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夏のハチたち2023 シリアゲコバチ編

この夏に出会ったハチたちの中から、初見のものや特記すべきものなどをいくつかピックアップしてみたい。
まずは、「シリアゲコバチ」というハチだ。

ここ何年かキバチやその幼虫に産卵するヒメバチなどを観察してきた立ち枯れのサワラに、「今まで見たことのない面白いハチがきている」と連絡があった。
行ってみると、確かに驚きの産卵の仕方をするハチだった。

この写真は産卵中のシリアゲコバチだが、産卵管がいったいどうなっているのかわかるだろうか。

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▲幹に産卵管を突き刺して産卵するシリアゲコバチ

シリアゲコバチも、産卵していなときは、こんな姿をしている。
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▲幹の周りを動き回って幹の中の産卵する幼虫を探しているシリアゲコバチ

あたりにはもう一種小さなハチが何匹か盛んに飛び回っていた。動きが速く写真にはうまく撮れなかったが、ぼけぼけ写真をよくみると、どうもシリアゲコバチのオスのようだった。

家に帰って、写真をチェックしながら、産卵管がいったいどうなっているのか探ろうとしたが、なかなかわからない。
図鑑やネットで調べても釈然としない部分があったので、次に日にもう一度見に行って、動画で撮ってみた。
ちょと長い。


産卵管はさやに収められている。産卵するとき

シリアゲコバチは、腹の先から出ている産卵管を背負っているように見えるが、見えているのは産卵管を収めている鞘らしい。

産卵するときは、この鞘から産卵管を取り出すのだ。そして、なんと腹を二つに割って、腹の真ん中から産卵管を出す。

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▲鞘から産卵管の先端が外れる。
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▲腹に沿っていた産卵管が出てくる
割れた腹から透明な膜袋が見える。産卵管を突き立てるときにかかる力と繰り出す長さのコントロールしているのがわかる。

産卵が終わると腹の真ん中から背中までぐるりと回して産卵管を収納する。


ヤドリバチ類は、幼虫の獲物に産卵するための産卵管がとても大事なので、それを保護する仕組みを持っているのだと思われるが、それにしても不思議すぎる仕組みに思えた。




# by 2008oharu | 2023-09-08 17:40 | | Comments(0)

8月の蛾から2023

ムクゲコノハは、夏の夜に樹液に来ているのを見る機会が多い。大きくて見ごたえがあるので楽しみの一つだ。
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▲樹液を吸うムクゲコノハ

オオミズアオは、昼間羽化したてのものを見ることが多いが、これも夏の夜に見ると、また違った感動がある。
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▲樹上の葉に止まるオオミズアオ

7月に続き、スズメガの仲間も次々に目にすることができた。
コエビガラスズメ
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エビガラスズメ
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キイロスズメ
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サザナミスズメ
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ウンモンスズメやシモフリスズメも多数見られた。

シャチホコガの仲間
シャチホコガ
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クビワシャチホコ
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セダカシャチホコ
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キシャチホコも多かった。

クワコは、なかなか目にすることができない成虫が見られた。
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ヤガいろいろ

アカエグリバ
見つけたら必ず撮りたくなる蛾の一つ。
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コシロシタバ
コシロシタバは、東京都のレッドデータに載っている蛾で、今まで数えるほどしか目にしていなかったが、この夏出ていると3回ぐらい連絡があった。でも、都合がつかず見に行けなかったので、このチャンスになんとか見たいと思っていた。出ていた場所を教えてもらっていっしょに探していたら、四度目のチャンスでやっと目にすることができた。
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▲翅の破れ具合から、前に見た個体と同じらしい。
不明のシタバガ亜科
これは、自分で見つけたものだが、シタバガ亜科は似たものがとても多く、種名にたどりつけなかった。
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オオタバコガ
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ツメクサガ
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どちらも地味で、見つけるたびに何だったっけと迷ってしまう。

キノコヨトウ
小さな蛾がたくさんいると教えてもらって見たもの。前にも見たことがあるキノコヨトウだった。
7~8個体が同じところにいたので、羽化したてだったのだろうか。7~8個体を見比べると、模様の変異が大きい蛾のようだ。
この蛾の幼虫は地衣類を食べるそうで、ケヤキの幹で何度か見かけたが、この発生場所はサワラだった。
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キノカワガ
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シロオビノメイガも現れて、8月末には秋の気配が色濃くなった。シロオビノメイガは9月に取り上げる予定。

追記:
この8月に見られなかった蛾:コシアカスカシバ
コシアカスカシバは、10年ぐらい前からずっと地元の公園で観察できた蛾だ。
特にピンオークに産卵・羽化することがわかってから、時期になると注意して探してきた。
しかし、そのピンオークの多くがナラ枯れなどのために伐採され、さすがにそのポイントでは見られなくなった。
観察できた他のコナラなども伐採されたものが多く、見られる場所が突き止められなくなってしまった。
それでも、今年も2か所ぐらいで抜け殻は目にしている。
東京都のレッドデータにも載っているこの蛾の観察ポイントをなんとか見つけたいものだ。
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▲今年見つかったコシアカスカシバの抜け殻




# by 2008oharu | 2023-09-04 08:04 | | Comments(0)

7月の蛾から2023 その2

普段は、地元の公園内でもだいたい決まったコースを歩きながら目に留まったものを観察しているが、ときどき人に教えてもらって、いつもとは違うポイントで探すこともある。
今月も、小さな蛾がたくさんいるという連絡を受けて、様子を見に行った。そこで見つけたものを中心にピックアップする。

アトモンヒロズコガ
開長14mmぐらいとあるが、翅を閉じていると1cmに満たないので、目視ではよくわからない。写真に撮ってみると、はっきりした模様がある。幼虫はきのこを食べると書かれたサイトがあった。
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スネブトヒメハマキ
これは以前にもみたことがある。やはりとても小さくて目視では蛾だとわからないが、写真に撮ってみると、複雑な模様をしている。
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フトオビマイコガ
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シロテンクロマイコガ
こちらは、毎年エゴノキなどで見る。
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クロモンチビヒロズコガ
やはりとても小さい。
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ヤマモモヒメハマキ
これも、写真に撮って初めて蛾であることがわかる。
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シロエグリツトガ
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こうした小さな蛾は、凝った模様の翅のものが多い。どんな効果があるのだろうか。


# by 2008oharu | 2023-08-03 21:09 | | Comments(0)

7月の蛾から2023 その1

7月は、猛暑が続き、フィールドをじっくり見て回らなかった。
あとから人に聞いて「見逃した」と思うものも多々ある。

オオモモブトスカシバ
スカシバガと言っても、止まった状態だと、翅がたたまれていて透けているのがわからない。
ふさふさしているのは名前の通り、脚の毛だ。
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以前に撮った飛んでいる写真を見ると、翅が透けているのがわかる。
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この蛾の生態はよくわかっていないので、目にするのは偶然だ。

シロモンノメイガ
ツトガ科ノメイガ亜科の蛾は、草の葉裏に止まることが多く、とても撮りにくい。
このときは、ハルジョオンの花の蜜を吸っていたので、撮ることができた。
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マイマイガ(オス)
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シモフリスズメ
これ以外にも何度か見ている。モチノキ科などが食樹なので、地元では比較的よく目にする。
スズメガでは、ウンモンスズメ・コスズメ等は見ているが、モモスズメ・ベニスズメなどを見逃している。2日目が見られるいい。
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モンキクロベニコケガ
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アカイラガ
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マエキリンガ
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この2種は色合いや形、大きさがよく似ている。

ハガタクチバ
色の個体差が大きい。特に白い帯がはっきりしている個体と、ほとんど白くない個体がいる。
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つづく


# by 2008oharu | 2023-08-01 20:28 | | Comments(0)

クロヒラアシキバチとニホンヒラタタマバチ

5月上旬のこと、立ち枯れつつあるモミジに黒い虫がたくさん集まっているのが目に入った。

近寄って見ると、モミジの幹には穴がたくさんある。穴は開いているものもあれば、ふさがっているものもあった。穴の周りでうろつく黒い虫はハチだった。体形からキバチだと思った。

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▲開いた穴とふさがった穴が多数ある幹をうろつくクロヒラアシキバチ

ネットで調べると、クロヒラアシキバチらしい。広葉樹に産卵するキバチだと書かれているので合致する。

穴の周りでうろつくキバチは穴から羽化してくるメスを待っているオスようだ。観察していると、折よく穴から顔のようなものが出始めているのが見つかる。

もちろん、オスがすぐに寄ってきた。

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▲穴から何かが…。
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▲出てきた。
動画で撮ってみる。


別の場面では、オスが群がっていることもあった。

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交尾を終えたメスは幹に産卵する。幹の上から下まで、たくさんのメスが幹に産卵管を突き刺して静止していた。

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しかし、よく見ると、ほとんど動かず、中には脚が宙に浮いた状態のものもいる。つまり、産卵後、そのまま死んでいるようなのだ。

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これも後で調べてみると「産卵管が抜けずに死んでしまい、死体が長期間、樹皮上に残っていることもある。」(ハチハンドブック/藤丸篤夫著より)とあった。

後日また見に行くと、たくさんのメスが前と同じ場所でこと切れていた。

羽化して一度も翅を開くこともなく、その場で交尾産卵して一生を終えるというのは、人間の感性からすると辛い虫性のようにも思えるが、考えてみれば成虫の存在意義は子孫を残すことなのだから、生を全うしたと考えるべきか。そういう昆虫はミノムシなどほかにもたくさんいるし。


このクロヒラアシキバチが集まっているモミジに、もう1種ハチが現れた。その特徴的な容貌から、前にも見たことがあるニホンヒラタタマバチだとわかる。

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▲ニホンヒラタタマバチ
もしかして寄生蜂なのだろうか。
家に帰ってハチハンドブックを見ると、ずばり「キバチ類の幼虫に寄生する。クロヒラアシキバチの寄生木で見ることが多く、出現期も重なる。キバチの産卵痕から産卵する行動がよく見られる。」とあった。

また観察に行くと、確かにクロヒラアシキバチが産卵しているあたりを、触覚でチェックしているのが見られた。
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▲産卵後に死んだキバチのそばで触覚を下ろして探るニホンヒラタタマバチ

そして、産卵する場面も。

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▲産卵するニホンヒラタタマバチ。不思議な産卵管だ。
動いているときには見当たらなかったので、折りたたまれていたのかもしれない。

ここで、一つ疑問が湧いた。クロヒラアシキバチの多くが産卵管を突き刺したまま絶命しているので、タマバチは産卵痕から産卵できないのではないか。
絶命しないで飛び立ったメスもいたのか?(観察中は目にしていない。)タマバチは必ずしも産卵痕から産卵するわけではないのか?
また、キバチが産卵管を刺したまま絶命するのは、単なる不幸な事故ではなく、タマバチが産卵しにくくするためということはないだろうか。

もう一つ。キバチ類は、幼虫が樹の木質を消化できるように、セルロース等を分解する菌類(担子菌類-きのこ)と共生していると言われている。キバチの中には母虫が産卵するときに菌類も注入するらしいのだが、このクロヒラアシキバチは菌類を持っていないのだそうだ。つまり、他のキバチが前もって菌類を注入した樹に産卵しているらしい。
クロヒラアシキバチが利用する菌類は、ミダレアミタケだそうだ。モミジの幹にはキノコがいっぱい出ていたので、きのこに詳しい人に確かめたところ、ミダレアミタケの可能性が十分あるそうだ。
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▲モミジの幹から出ているミダレアミタケらしいキノコ

たぶん、クロヒラアシキバチは、自分は菌類を持っていないが、このキノコの匂いを頼りに産卵木を選ぶのだろう。そして、ニホンヒラタタマバチもこのキノコの匂いを頼りにホストを探しにやってくるに違いない。

もう一つの謎は、キバチが羽化した穴から、変形菌が出てきていること。
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▲穴から変形菌が…。

この現象は、以前にもサワラの穴からヤリミダレホコリが大量に発生したときに気が付いた。
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▲キバチ類が羽化した穴からヤリミダレホコリが出てきた。

キバチが運ぶ菌類と、この変形菌は何か関係があるのだろうか。

寄生バチをめぐる関係は、奥深く複雑で迷路のようだ。









# by 2008oharu | 2023-07-06 21:36 | | Comments(0)